イソニアジドの抗結核作用は、イソニアジド活性化酵素KdtGによる活性化により生じたラジカル中間体が、結核菌に特有の成分であるミコール酸の生合成を阻害することによる。申請者の研究グループは、好塩菌に存在する結核菌KatGのホモログの結晶構造を高分解能で明らかにし、これに基づいてイソニアジド活性化反応に重要な働きをすると予想されるアミノ酸残基や構造をKatG分子中に同定した。それらの機能を詳細に解析するため、特殊な好塩菌/大腸菌シャトルベクターを用いたKatG過剰発現系を利用して、変異酵素を作成するシステムを構築することに成功した。またこれを用いた変異導入によってKatGの分子構造を改変することで、そのイソニアジド活性化作用を大幅に上昇させることにも成功している。Y218A変異により、そのイソニアジド活性化反応は野生型酵素と比較して70倍以上上昇したが、これは、イソニアジド分子のKatG内部へのアクセス経路を形成しているペプチドループの揺らぎを抑える機能を持つTyr218がAlaに置きかえられることでアクセス経路が'やわらかく'なり、基質分子の通過がより容易になったためと考えられる。さらに、活性中心近傍に存在するペプチド問架橋修飾[W95-Y218-M244]の機能を解析するため作成したM244A変異酵素については、その結晶化に成功し、現在構造解析を進めている。
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