研究課題
コレラ菌は宿主体動物体内外での多様な環境中で生存するために、様々な刺激を認識し、それに対して適切な応答を行っている。コレラ菌の野生株にメチル化酵素CheR2を過剰発現して方向転換頻度の高い株とし、セリンまたはアラニンの走化性応答を調べた。次に、コレラ菌がこれらの化学物質の入ったcapillary内に誘引されるかどうか調べ、セリン、アラニン、システインを誘引物質と同定した。さらに胆汁が誘引作用を示したため、誘引物質の特定を検討している。一方、フェノールが忌避物質であることを示した。さらに、これらの物質を認識するレセプターについての研究を、大腸菌のタンパク質45種の遺伝子をクローン化し進めている。一方、コレラ菌の走化性相同遺伝子(che)群のうち、走化性への関与が考えられている領域IIについて、5つのcheY遺伝子をクローン化しその機能を調べた。結果、II領域のCheY3のみが大腸菌やコレラ菌の鞭毛回転を逆転させ、CheY3の野生型よりD16K変異体がより多くのタンブルを誘発していた。そこで、鞭毛回転方向制御にはII領域に存在するCheY3のみが関与すると結論した。続いて、IやIII領域のCheYの相互作用蛋白質を検索した。C末端にFLAGタグを付与したcheYホモログのconstitutive active変異体をコレラ菌に発現、精製し、その精製液をSDS-PAGEにかけた。CheYホモログと同時に精製されるタンパク質を検出し、その内すすぎ液には含まれない3種のタンパク質について、N末端の配列を決定した。その結果、HSP60、アクチンホモログであるMreB、toxin co-regulated pilusを構成するTcpAが同定された。現在、これらのタンパク質のCheY1との相互作用を確認し、他の共精製タンパク質についての同定を検討中である。
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