研究概要 |
1.転写レベルでのTLR発現制御機構の解明 最近,我々は,CFTRに変異を持つ嚢胞性線維症(Cystic Fibrosis : CF)患者由来の上皮細胞において,TLR2,TLR4およびMD-2の発現量が先天的に上昇していることを見出し,CF患者において細菌感染による炎症応答反応が増強することを明らかにした.本年度は,どのようなメカニズムでTLR2の発現が上昇しているかについて検討した.その結果,DNAメチル化阻害剤である5-azacytidineを用いた実験から,CF細胞におけるTLR2の発現上昇にはTLR2遺伝子プロモーター領域のDNAメチル化が関与していることが示唆された.以上の結果より,CFTR遺伝子変異によって細胞内のepigeneticな遺伝子変化が引き起こされTLR2遺伝子の発現上昇が起こり,その結果,細菌感染による炎症反応の増強が起こりやすくなる可能性が示唆された. 2.タンパク翻訳後レベルでのTLR発現制御機構の解明 N型糖鎖を認識しさまざまなタンパク質のプロセッシングに関与しているER分子シャペロンCalnexin, Calreticulinのアデノウイルス発現系(Ad-CNX, Ad-CRT)を構築した.また,TLR4-WTおよびTLR4-299/399(細胞膜上に発現しないTLR4の変異体)の細胞内挙動を検討するためのGFP融合タンパク発現ベクターの作製を行った.さらに,TLR4,TLR4/MD-2,TLR4/MD-2/CD14をexogenousに恒常的発現するCHO細胞およびTLR4-YFP, TLR4-YFP/MD-2をexogenousに発現するHEK293細胞を入手し,各種実験を開始した.現在までのところ,免疫蛍光法および免疫沈降法を用いた実験の結果,TLR4の細胞内プロセッシング機構にCNX, CRTの両分子が関与している可能性を示唆するデータを得ている.次に,LPS処理によって引き起こされるTLR4 endocytosisが,どのような経路を介して起こるかを検討した.その結果,nystatin処理によってTLR4 endocytosisは阻害され,chlorpromazineによって阻害されなかった.したがって,TLR4 endocytosisはcaveolaeを介した経路で起こることが示唆された.
|