細胞に感染し宿主ゲノムに組み込まれたHIVの遺伝子はLTRプ白モーターによって発現を調節されている。宿主に組み込まれたHIV遺伝子は潜伏期にはLTRプロモーターがメチル化により発現が抑制され、顕在期には脱メチル化により活性化されることが明らかにされている。転写されたウイルスmRNAの5'端に存在するTARは高次構造を有し、TAR結合因子が転写調節に関与している。我々はCBPにPol IIをリクルートしCREB依存的な転写を活性化することが知られているRHAがTARに結合し、HIVの遺伝子発現に非常に重要な役割を果たしていることを報告した。 我々はCREBを介した転写系においてHDACを含む転写抑制複合体の構成因子であるメチル化DNA結合因子MBD2がRHAと結合して転写を活性化し、メチル化されたCREは転写を抑制することから、MBD2がRHAまたはHDACというように結合因子によってプロモーターの転写の活性化と抑制を制御しうるのではないかという仮説を提唱した。そこでRHA/MBD2複合体がCREだけでなくHIVのLTRプロモーターにおいてもDNAメチル化依存的な転写制御に関与していると考え検討を行った。その結果CREと同様にMBD2はRHAと協調的に脱メチル化されたLTRプロモーターの転写を活性化し、メチル化されたLTRプロモーターの転写を抑制した。このことからHIV遺伝子のRHA/MBD2複合体を介したエピジェネティックな転写制御の可能性が示唆された。
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