「打ち水によって気温が下がる」、「ぬれた体で体が冷える」などの生活体験を科学的に考える理科教材として、「水の蒸発、気化熱による温度低下」をテーマとした演示実験、映像教材を考案した。 気化による温度低下現象は、「水が蒸発する際に熱が奪われる(蒸発熱)」として解説されるが、なぜ蒸発が起こるのか、なぜ熱が奪われるかは分子運動論にもとづいて理解される必要がある。こうした理解を促すために以下のような演示実験を考案し、映像教材を作成した。 水を少量入れたプラスチック容器を真空容器(デシケーター)内に入れ、真空ポンプによって内部の空気を水蒸気とともに排気する。真空容器内は連続排気によって飽和水蒸気量に達することなく、水面から水が蒸発し続け水温が低下してゆく。減圧されることは容器内に入れた風船のふくらみによって確認できる。水の温度はUSB接続した温度計によって測定しパソコン画面に時間を追って表示する。時間とともに温度低下が進むこと、減圧による沸騰、水面の氷の生成を観察することができる。 フレーク状の氷を温度計の先端に付け、真空容器に入れて同様の実験を行うと、氷は「昇華」による温度低下をみせ-20℃程度まで低下することが容易に観察できる。生成された氷は、はじめの状態とは異なり硬く引き締まっていることが確認できる。 こうした実験を通じて、水、氷における水分子結合の分離が、蒸発、昇華の継続によって進行し温度低下につながってゆくことが把握され、温度概念、物質の三態、蒸発・昇華(気化)の分子論的理解に役立つことが期待できる。
|