研究概要 |
算数・数学の教授的力量形成向上を支援する情報システムの開発のために,子ども主体の授業設計の手がかりとしての先行実践の知・情報の活用について調査・研究を行い,以下の3点にまとめられる成果と支援システム開発のための情報を得た. (1)授業設計の手がかり(1)教科書の指導書,(2)授業の構成,(3)反応・応答,(4)(教師の)働きかけ,(5)板書,(6)指導教官・同僚の授業,(7)レディネス,(8)具体例の活用,(9)教材研究,(10)教科書,(11)先行実践の指導案,(12)学習活動,(13)シミュレーションにより、教師の活動や思考過程を分析・検討した.教師は教職経験に応じて多くの手がかりを要し,授業設計スクリプトのほぼすべての過程をふむ豊かな授業づくりを行うようになる.学生,新任教師にはこの活動が乏しい. (2)教師が子どもの認知過程を共有することが有効である.教材研究・授業設計は,情報収集,教材の表象(具体化),授業過程の構成・検討の3つの階層に亘る活動で,「教材研究→学習活動→働きかけ→反応・応答」の流れで,教材の表象を図り,働きかけ・授業過程を構成する仮説生成(アブダクション)を行う過程で,「教材研究,働きかけ,授業過程の構成」に関わり、子どもの認知過程を共有するための情報の支援が求められる. (3)授業記録から教授方略・意図の構造を分析・抽出する活動と先行実践の知を活用した授業設計が有効である.子どもと認知過程を共有し,数学的考えを育むような先行実践から授業設計の手がかりやメッセージなどを見つけるために,先行実践における教師の内面的な遷移過程の知見(実践の知)の積み上げとその定式化のため、先行実践情報の領域・分野の質と量を充実させることである.
|