研究概要 |
本年度の前半は研究室に備え付けられている研究設備とコンテンツを利用した共同学習実験を行い、バーチャルリアリティ(VR)が共同学習に与える効果を考察した。後半では没入型ディスプレイを構築するための基礎技術の検討を行った。 1.ネットワーク接続型-VR技術を用いた共同学習コンテンツの試作と実験、および評価 ネットワーク接続型VRとは、VRコンテンツが導入されたPCをネットワークによって相互接続し、参加者相互の行動をアバタと呼ばれる代理表示などを通して確認できるシステムのことである。このシステムを用いた体験学習実験を行った。 このシステムはVR技術によって忠実に再現された中米ホンジュラスのコパン遺跡を探検しつつ、同時にマヤ文明について学習できるシステムである。児童はPC接続されたゲームパッドを操作することで、VRコンテンツを自由な視点から眺めることができる。体験学習は、参加意欲を高めるためスタンプラリー形式で行った。 この実験を通して観察された児童らの行為で特に興味深い行為が2つあった。一つは、VRコンテンツに表示された他のグループのアバタを追いかけることによって、問題が書かれた立て札の場所を探していることである。もう一つは、グループ間のコミュニケーションが,VR空間内に閉じることなく,実空間、すなわち児童らが実際に活動している空間での相互行為に発展していることである。このことから、ネットワーク接続型VRで構築された学習環境は,VR空間内でのコミュニケーションだけでなく,実空間での相互行為にまで発展させる可能性があることが考えられる。 2.PCを用いた学校向け没入型スクリーンプロトタイプの開発 没入型スクリーンとは、体験者をスクリーンで囲みこむことによって、VRコンテンツへの没入間を高めた装置のことである。本年度行った開発、および評価より、汎用のPCを利用した場合のVRコンテンツの生成能力は従来用いられている専用のハードウェアに対して遜色がないことが確認されたが、複数のスクリーンで同期してコンテンツを表示する点、および立体視を行う場合の能力について改善を行う必要があることが判明した。前者については同期ソフトウェアの開発で解決できる見込みが立ったので今後実装を行いたい。後者については関連研究を調査の上、より汎用性の高い解決方法を検討したい。
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