研究分担者 |
山口 武志 福岡教育大学, 教育学部, 助教授 (60239895)
馬場 卓也 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 助教授 (00335720)
植田 敦三 広島大学, 大学院・教育学研究科, 助教授 (50168621)
二宮 裕之 愛媛大学, 教育学部, 助教授 (40335881)
岡崎 正和 上越教育大学, 学校教育学部, 助手 (40303193)
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研究概要 |
本研究の課題意識は,数学的認識の質的変換を可能にする教材構成の原理にある。そこに日本独自の制度的視点を加えて,「算数と数学の接続」という形で問題化した。すなわち「教育内容と学習の適時性」について,一般化の視座から教材の構成原理にアプローチする。本年度の研究目的を具体的にまとめれば,次の2点に集約される。第1の目的は,小学算数と中学数学の接続を念頭に置きながら,移行の本質を記号論の視座から明らかにする枠組みを構築することである。第2の目的は,移行を決定づける教材を開発した上で,その指導のあり方を提案し,その有効性および妥当性を実証的に検証することである。なお,本研究では,「算術から代数」への移行を促す教材として,「分数の除法」と「正負の数の減法」の教材化を構想している。また,「図形から幾何」への移行を促す教材としては,「図形の相互関係」と「図形の作図」の教材化を構想している。 上記2つの研究目的に対応させながら,本年度の研究成果を具体的にまとめれば,以下のようになる。第1の目的については,Presmegの「記号論的連鎖(Semiotic Chaining)」に注目しながら,移行を促す認知過程を記号論的視座から分析するための枠組みを構築した。特に,本年度の研究活動の一環として,Presmeg教授を日本に招聘し,国際ワークショップを開催した。「記号論的連鎖」に関する相互理解を深めるばかりでなく,本プロジェクトで構築した「Dorflerに基づく一般化分岐モデル」との接続についても検討した。第2の目的については,上記4つの接続教材のうち,「図形の作図」を取りあげ,その学習過程に記号的連鎖を適用して,数学的認識の変容過程の分析を記号論の視座から試みた。作図の指導が,単なる技能にとどまるのではなく,意味を形式にまとめ直し,特殊と一般を区分し,直観を論理に変換する発条になりうることを明らかにした。
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