研究概要 |
宇宙線とは宇宙を飛び交う素粒子や原子核の総称で,この研究で観測するのは,そのうちでも太陽系外から来るエネルギーの高い宇宙線である.そのような宇宙線のなかに,広い範囲にわたって時間相関を持って到来するようなものがないか,簡易型観測装置を高校,科学館,高専,大学などに設置して観測する.観測したデータはインターネットで中央局に送信・公開し,誰でも宇宙線飛来情報がリアルタイムに得られる.高校生らがこの観測に参加し,パソコンで宇宙線の飛来情報を見ることにより,物理に興味を持つきっかけとなることを期待している.特に,生徒たちが,学校で習う完成された科学とは違った本物の科学研究に参加し,それに触れる機会を持つことにより,授業とは違った貴重な体験を得ることができると考えている. 現在までに観測装置を,大阪市立科学館,大阪府立金岡高校,近畿大学工業高専,姫路市立姫路高校,大阪府立大手前高校,樟蔭高校の7箇所に設置して連続観測を行っている.観測データの送受信に必要なプログラムはホームページhttp://mpu.hep.osaka-cu.ac.jp/~crsからダウンロードできる.このプログラムを使って,インターネットを通してどこからでもデータを受信できる.ホームページでは宇宙線やその観測に関する解説なども整備しつつある.大阪市立科学館では,タッチパネル付のディスプレーを用いて観測データと宇宙線一般に関する解説を一般市民向け(小学生が多い)に展示している. この装置を使った高校での活動としては,科学部活動が中心である.科学部のメンバーは装置の設置,運転,装置の動作状況の報告など,観測に必要な作業を行っている.また宇宙線に関していろいろ文献などで調べたりしている.さらにホームページを作り自分たちの活動の発表を行っている.また高校での総合学習として,出張授業に行き,宇宙線の説明を行っている.また,生徒に大学の研究室を訪問してもらい研究への興味を高めている.アメリカとカナダでは共同のNorth American Large Time Coincidence Array (NALTA)と呼ばれる類似計画が進行中である.NALTAは数グループの集まりで,非常に高いエネルギーの宇宙線や広い範囲に時間相関を持って到来する宇宙線の観測をめざして観測網を広げている.また,ヨーロッパでも数カ国で計画中である. 広い範囲に時間相関を持って到来する宇宙線を観測データを解析して探す作業は,現在進行中である.現在までのところ,数例の時間相関を持つ現象が観測されているが,統計の揺らぎの範囲で説明できる.
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