本研究課題では、社会的理解が進む一方、科学的理解が遅滞する放射線教育を支援するためのオンライン放射線教材の開発ならびにその教育実践を目的とする。研究では、小中高等学校の教科書における放射線の取扱いを調査するとともに、小中高等学校の教諭から付けたい力としての放射線に関して聴き取り調査を行い、中学生向けに「医療と放射線」、高校生向けに「原子核と放射線」と題するオンライン教材を作成した。更に、作成した教材を、学校における課程教育(オンスクール教育)および学校外自由教育(オフスクール学習)において活用した。特に、オフスクール学習においては、生徒向けだけではなく、生涯学習としての放射線教育を試みるために一般市民を対象とした科学技術体験活動あるいはコラボレーション学習活動を開催し、高い教育効果を得た。 オンライン放射線教材の活用によって、従来にはない教育形態を提供することが可能となる。当該教育の特徴を以下にまとめる。 (1)教科・科目を超えた問題提示型学習活動の支援 (2)個人あるいは少人数単位で学べる学習環境の創造 (3)タブーを作らない学習項目の提示 (4)ディベート機会の創造 (5)教材効果の広がりおよび価値対立的な問題に対する合意形成能力の育成 これらの成果を基礎として、今後は、インドにおけるオンライン放射線教育教材を用いた教育など海外での教育実践を行う。また、これらの効果を脳科学的に解明する試みも新たに実施する。
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