研究概要 |
本研究では,次の観点からデザイン行為に埋め込まれた創造性を分析し,理数科系教育における教授-学習システムの構築のための基本構造の明確化をはかった.(1)「独創的な発想」を促す要因の分析.(2)「論理的な思考力」の特徴とその過程の記述.(3)「独創的な発想」と「論理的な思考力」の関係について,その構造の把握 上記の観点からの考察を総合した結果,「創造的な学び」としてアクティブな思考プロセスが抽出された.これを教育における「創造性」と呼ぶこととし,学ぶことを創造的な情報の意味生成と位置付け,学習者が自らの学びをドライブしていくという動的構造と,知識の獲得と活用のパラレルな関係を基本とする「創造性支援」の関係図を得た.さらにそのメカニズムを理解することで,理数科系教育において具体的にどのような学習コンテンツを,どのように教授する方法が学習者の「創造性」育成に効果があるか,また,その理論的裏付けについて,観察実験や脳科学からの知見を総合し,生涯を通じた創造的な学びとは何かという視点から「個に適合した学習」の手がかりが得られた. 上記研究プロセスを経て教授・学習システムの開発に向けて下記の提案を行なった. 1,新世紀型教育の特徴として次の点を主張. (1)学習者が主体の「創造的な学び」による探索プロセスを軸にした展開.(2)上記を促進する学習者の感性を通じたコミュニケーション.(3)個の適性に合った学びのデザインとコーチング 2,数科系教育における「創造性」について,次の点を指摘. (1)創造的発見:知覚的なレベルの「気付き」を「探究」の種として育むことの重要性.(2)その検証のための推理(意味,視点の発見)と説明(論理性)の探究の繰り返し.(3)自己の学びを作品として表現する過程の重要性. 3,上記の「創造的な学び」を通じ,個に適合した学習デザインを構成するためには,ITを活用した創造性教育の実践として(1)学習者ひとりひとりの適性,感性にあうインタフェイス.(2)すでに構築されている専門的なデータベースの活用(本物,プロの知識を使う)ことが有効である. 本研究の教授・学習システム基本案を教育実践の場で展開するために,今後,更なる理論構築及び実践の場での評価,検証が求められる.
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