研究課題
特定領域研究
「張自烈撰『四書大全辯』刊刻事情」(東アジア出版文化研究-こはく、知泉書館、2004)では、崇禎十三年刊の初稿本と順治八年刊の重訂本との二種類のテキストがある該書の、そのいずれの巻首にも掲載される「掲帖序文之類」を読解することにより、斯書の刊行をめぐる当時の政治・出版政策の影響関係や、知識人と官僚や書肆との交流を具体的に解明した。総括班最終成果報告書所収の「清初四書注考二題」では、その第一章「宮城県図書館蔵順治年間刊行四書大全辯考」において同館所蔵の四書大全辯順治本を善本と認定しつつ、テキスト間の文書配列の異同に時代の混乱を読み取った。該書は、我が国において宮城県図書館のほか、国立公文書館内閣文庫(昌平坂学問所由来と紅葉山文庫由来の2部)、東京都立中央図書館、静嘉堂文庫、尊経閣文庫、蓬左文庫にも収められるが、文書の有無や配列が各本各様である。それらの差違を比較した結果、宮城県図書館蔵本は、文書の数が他の本に較べて最も多く、それらの配列も合理的だとみなせ、また順治十三年以前の成立にかかる静嘉堂本を整序したテキストだと推定した。第二章「東北大学図書館蔵清初四書注考」では、同館狩野文庫所蔵の崇道堂四書集註大全と朱子四書全義との解題を記した上で、清初の四書注と時代思潮との関連を考察した。崇道堂四書集註大全は、張廷玉と朱錫族による共編の改訂版四書大全である。撰者は、博学をつうじて「帰約」することないし「自得」することをすすめる。朱子四書全義は魏裔介の編著であり、かれによる康煕二十四年の原序がある。魏裔介は、四書或問の思想の枠内においてではあるが、学問の目標を「心と理」との一体状態に至る点に据える。以上2点の書物は、いずれも朱熹自身の注釈に回帰しつつ四書の精神を体得しようとする清初期の朱子学の一翼を担う書物であり、朱子学に対して批判的色彩の強い四書大全辯順治本と較べると、康煕朝の学術傾向をより如実に反映する注釈書だとみなせる。そのほか調整班(B)の成果報告書に載せた「明清四書注釈書関連二表」では、研究課程において集積した諸情報を一覧できる表を2点まとめた。ひとつは「四書大全辯順治本文書配列一覧」であり、もうひとつは「現存明清四書註解基本情報一覧稿」である。
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東アジア出版文化の研究、最終成果報告書
「出版物の研究」最終成果報告書(東アジア出版文化の研究、調整班(B))
Final Report on a Study of Publishing Culture in East Asia (forthcoming)
Final Report on a Study of Publishing Culture in East Asia - (B) a Study of Publications (forthcoming)
東アジア出版文化研究-こはく
ページ: 1-23
Studies of Publishing Culture in East Asia- Kohaku