平成15年度に実施した研究活動のなかで、もっとも重点をおいたのは、日本・中国に伝存する(伝存した)、研究課題関係モンゴル語古籍の調査と分析である。このため、国内を中心に国外(中国・米国)でも調査を実施した。とくに戦前、小林高四郎の尽力によって、北京の原所蔵者のもとで写書され、日本へ将来されて、蒙古研究所が所蔵し、服部四郎により論文のなかで言及されているが、戦後は行方不明となっていた、「カラチン本蒙古源流」(Erdeni-yin tobci)の一抄本を米国ハーヴァード大学燕京研究所図書館において再発見し電子化し、既知の「蒙古源流」抄版本のどの系統に属するか、その資料的価値をあきらかにできたのは成果であった。 また江上波夫により、戦前期に日本へもたらされた、モンゴル語資料(現在は、横浜ユーラシア文化館、東京大学東洋文化研究所などで保管)の整理をおこなった。江上収集資料は、おもに仏典を中心として、一部、社会史的資料もふくみ、時期的にも16世紀後半から19世紀におよび、採集地も内モンゴル各地にわたる。これをデーターにとり電子化し、基本的な整理をおこなうと同時に、横浜ユーラシア文化館で開催された、特別展覧会『オロンスム-モンゴル帝国のキリスト教遺跡-』の資料展示にも協力した。なお江上関係資料の戦後、接収され行方不明となった部分に関して、台湾国立故宮博物院および中央研究院歴史語言研究所、近代史研究所において追跡調査も実施した。
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