本年度の活動としては、ロシア連邦(ロシア科学アカデミー東洋学研究所サンクト・ペテルブルグ支所)において資料調査をおこない、また国内研究機関・図書館(東洋文庫、天理図書館、京都大学附属図書館)でも資料調査をおこなった。19世紀以降、ほぼ1920年代までのモンゴル語・満洲語出版物のデータベース作成をおこなったが、現物を確認できていないものが多く、今後も調査を継続する予定である。 そして本研究課題でえた成果にもとづき、ユネスコが出版している『中央アジア文明史/History of Civilizations of Central Asia』の最終巻、第6巻(2005年上半期刊行予定)に収録される、18世紀より20世紀初頭のモンゴルに関する章を執筆した。清朝によるモンゴル支配形成から20世紀はじめのモンゴルが独立するまでの時期を対象として、モンゴルをめぐる政治状況と社会変容を追いながら、そのなかでモンゴル独自の「文化」がどのように形成・発展し、外部の「文化」とどのように接触したか、これが基本的な論点である。 特定領域研究「東アジア出版文化の研究」のなかでは、C・D班共催研究会《アジアの特殊文庫》(2004年5月15日、於京大会館)で研究報告「稲葉岩吉の蔵書と資料の行方」をおこない、またD班を中心とし編集された『ナオ・デ・ラ・チーナ』第6号へ「日本人東洋史学者と清朝内閣大庫史料との邂逅-東北大学附属図書館狩野文庫の「清査東大庫底档档」について-」を発表した。東アジア出版文化のなかでの内陸アジア語系出版資料の位置と意義を、共同研究のなかであきらかにしようとした。このほかInternational Workshop on Xingjiang Historical Sources(2004年12月12日〜14日、箱根)をおこない、海外からの研究者も招聘し、本研究課題では十分に扱うことができなかった、新疆地域におけるチュルク語(チャガタイ・トルコ語)による出版もふくめた史料所在状況を検討し、さらに海外からの出席者のうち、清朝史研究者を中心に「セミナー:中央ユーラシア史研究のあらたな展望」(2004年12月17日、AA研大会議室)を開催した。
|