本研究の2003年度の研究計画は北京と上海で『二十五史』編集資料を収集するのは主な目的であったが、SARSの影響で夏期の調査は実施できなかった。その代わりに、2003年12月20日〜2004年1月6日、2003年2月20日〜同年3月2日、2回に分けて中国北京、上海で『二十五史』校点関係者のヒアリング調査と関係資料の収集を実施した。これにより、以下の成果を得た。 1、1971年を中心に、上海復旦大学の章培恒教授と陳允吉教授、上海外国語大学の陳福康教授などの協力を得て、『二十五史』校点作業をめぐる北京グループと上海グループの分業実態を調査した。 2、北京で顧頡剛の元弟子である劉起〓氏を訪問し、五十年代における顧頡剛氏の古籍整理に関する事実関係を調査した。特に『尚書』の整理と研究について詳しく調べた。 3、『清史稿』整理者の一人である王鐘翰先生を訪問し、『清史稿』整理当時の事実関係を調査し、当事者としての重要な証言を得た。『清史稿』の整理は、当時、多数の版本を校勘しながら、校点したが、しかし、文革時期の社会政治状況の中で、校勘記を付記することは許されなかった。その校勘記は王鐘翰氏が保管していたことは確かだが、現在行方不明になった。(年数がたつことと、移転が重ねたため) 4、関連成果として、中国社会科学院研究員王煦華氏の手稿『国民政府の禁毀書刊目録』5冊(約30万字)、『現代禁毀書刊目録』2冊(約10字)、『現代反禁毀書刊目録』8冊(約40万字)のコピーを入手した。これは王煦華氏が1950年〜1970年までの20年間を費やして編纂したものであるが、現在中国の出版状況の下では、なかなか出版する機会がないといえる。しかし、中国現代史における出版文化を研究する上では、極めて貴重なものであるため、本研究の研究資料として購入して公開することを、王煦華氏と交渉しているところである。
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