明治十年代に来日した黎庶昌・楊守敬を始め、近代以降、伝統的な教養を有する多くの中国人学者は日本で佚存書を初めとする古典籍の蒐集を行い、また、江戸期以来の考証学の伝統を有する日本人学者の協力により、日本や中国において、日本伝存の漢籍貴重書を出版した。本研究はこれらの古典籍の出版をめぐる日中両国の学術交流を辿り、本年度においては、内閣文庫、早稲田大学中央図書館、大東文化大学図書館、東京大学総合図書館、同東洋文化研究所、京都大学人文科学研究所、関西大学図書館、中国国家図書館、北京大学図書館、上海図書館などの国内外の所蔵機関において、関係資料の調査と蒐集を行い、とくに董康、傅増湘など日本と関係の深い蔵書家の研究と、近代中国における重要な出版機関である商務印書館の古典籍影印事業に注目し、研究を進めてきた。また、関係者に対する聞き取り調査や資料整理を行ってきた。業績としては、以下の二点を挙げることができる。まず第一点としては、「米沢藩旧蔵宋版三史をめぐる日中文化交流について」(『東アジア出版文化研究(論集)にわたずみ』2004年2月、に所収)であり、第二点としては、「中国に伝わった百万塔陀羅尼について-明治前期における在日中国人の古典籍蒐集活動に関する一考察」(『百万塔陀羅尼の研究』、汲古書院、2004年出版予定、に所収)、がある。その他に、関係する中日両国の学者の日記・書簡類の翻刻作業も進行中である。
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