明治十年代に来日した黎庶昌・楊守敬を始め、近代以降、多くの中国人学者は日本で古典籍の蒐集を行い、また、日本人学者の協力により、日本や中国において、日本伝存の漢籍貴重書を出版した。これらの古典籍の複刻・影印本は中国の国内外の研究者によって広く利用され、近現代の中国古典研究において大きな役割を果たしてきた。今回の研究では、古典籍の覆刻・影印出版事業における日中両国の学者間の交流に焦点を当てつつ研究を進め、とくに、中国近代出版史における重要人物である、楊守敬、羅振玉、張元済などによる古典籍復刻事業における、日本人との交流の史実を明らかにする一次資料の発見を心がけ、商務印書館の古典籍復刻事業とその中国近代文化史における重要な意義について解明した。これらの研究を通して、岸田吟香の上海での出版活動や、楊守敬・張元済などの中国人学者の日本における学術活動とその後の古典籍の出版事業との関わりなどについて論文を纏めることができたのと同時に、近代における古典籍の復刻・影印事業に関する全般的な研究に関しても新たな知見を得ることが出来た。
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