王守仁は明代最重要の思想家であり、日本を含む東アジア世界においても大きな影響力を保ち続けてきたが、著作のテキストや、出版の経緯に関する研究は十分になされていない。本研究はこの問題に注目し、研究の基盤として、彼の著作の文献学的研究を手がけてきた。今年は、国内の各図書館に現存する関係文献を探り、王守仁の生前から死後に至るまでの、彼に纏わるさまざまな逸話、伝説を収集し、王守仁の著作の成立と出版を中心として研究を進めてきた。また、現存する王陽明関係の文献の徹底的な調査とその著作の成立、出版に関する史実の考証を通して、各テキスト間の関係および今日まで伝わってきた経緯を辿り、それらの出版状況を解明に努めてきた。更には、王陽明の著作の成立と出版の全体像を捉えることにより、王陽明著作の全貌を解明できるだけではなく、陽明及びその弟子たちがいかにして出版という手段によって陽明学の社会的影響力を増していったのか、王陽明の著作の出版が当時の文化環境とどんな関わりを持っていたのかなど、今まであまり注意されてこなかった重要な問題を解決すべく努力してきた。業績としては、以下の三点が挙げられる。 1.関於王守仁『良知同然録』的初歩研究 2003年12月6日(中国・寧波) 明清浙東文化国際学術研討会 (「明清浙東文化国際学術研討会」にて発表、論文集に収録予定) 2.王守仁逸存書の研究 2004年1月9日(東洋大学白山校舎16階スカイホール) 「東アジア出版文化の研究」B・E班合同研究集会 3.訳注『陽明兵筴』の基礎的研究(4) 2004年3月(共訳) 早稲田大学理工学部複合領域人文社会科学研究『人文社会科学研究』第44号
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