研究概要 |
諸般の事情で平成15年度内には発表に至らなかったが,高麗末期から李氏朝鮮初期にかけて成立した中国語教科書『朴通事』『老乞大』,および関連する文献の電子テキスト化を行いつつ,『朴通事』『老乞大』の頻出語句や難解な語彙についての通訳本である『老朴集覧』と,『朴通事』『老乞大』に諺解を付した『翻訳朴通事』『翻訳老乞大』(以下『翻訳』と表記)との関係について研究を進めている.いずれも李氏朝鮮初期の訳官である崔世珍の手になるものと考えられており,『翻訳』の諺解は、基本的には『老朴集覧』の解釈を踏襲している。しかし,両者を詳細に見比べていくと、互いの解釈にくい違いがあったり、『老朴集覧』が『翻訳』を参照したかのように見える箇所も散見される.これは,現存する『老朴集覧』と『翻訳』のいずれか,あるいはいずれもが,崔世珍の手になるものではないという可能性を示している.平成16年度のはじめには,このことについて発表したいと考えている.
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