研究概要 |
Ewing's sarcoma(EWS)はEwing肉腫で見られる染色体相互転座t(11;22)においてFli1と転座する遺伝子として見出されました.その後も多数の固形腫瘍や神経芽腫でEWSが転写因子と融合遺伝子を形成していることが報告され,がん化誘導に寄与することが示唆されています.しかし,非融合型EWS本来の機能およびEWS融合遺伝子形成による癌発症機構は不明です.申請者はEWSが転写制御の中核的存在である転写コアクチベーター・CREB binding protein(CBP)やRNA polymerase II(RNA Pol II)と相互作用することを証明し,EWSの転写共役因子としての機能を予測しました.そこで,本研究ではEwing肉腫がん遺伝子EWSの生理機能の解明を目的とし,EWS融合遺伝子形成による悪性腫瘍発症の分子メカニズムの基盤的理解を目指します. 申請者は,CBPが相互作用するDNA結合性転写因子を指標にEWSの標的転写因子の探索を行い,EWSが特異的に癌抑制因子p53の転写活性を増強することを見出しました.さらに,EWSはCBPと協調的にp53の転写活性を増強すること,CBP結合活性を欠損したEWSはp53転写系への活性化能を消失することを明らかにしました.以上の結果から,EWSはCBP依存的にp53の転写を活性化する転写コアクチベーターであり,その具体的な標的遺伝子としてp53の制御下にある遺伝子群が予想されます.これまで不明だった生体内におけるEWSの生理機能に,選択的がん化機構の理解が進むことが期待でき,EWS融合遺伝子形成による悪性腫瘍発症の分子メカニズムの解明に迫れると考えます.
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