研究概要 |
本研究では,Nrf2により制御される一連の遺伝子群が,細胞の癌化の防御に対して,どのような貢献を果たしているのかを明らかにすることと,癌化の防御におけるNrf2による制御系と異物代謝系第1相酵素群(チトクロームP450)や,DNA修復酵素(Ogg1),さらには,細胞増殖をもたらす癌遺伝子群(c-Ha-ras, Apc^<Min>)との機能的相互作用を明らかにすることを目的として,Nrf2欠損マウス,Nrf2::AhRR2重欠損マウス,Nrf2欠損::APC^<Min>複合変異マウスにおける易発がん性を検討した.Nrf2単独欠損マウス,AhRR単独欠損マウス,Nrf2::AhRR2重欠損マウスとコントロールとして,野生型マウスそれぞれ10匹に対して,皮下にベンツピレンを投与した.その後,皮下に腫瘍が生じてくるまでの期間と,腫瘍の大きさを経時的に観察した.AhRR欠損マウスでは,発癌抵抗性を獲得していたが,Nrf2::AhRR2重欠損マウスでは,発癌が起こりやすくなっていたことから,AhRR欠損マウスの発癌抵抗性には,Nrf2の制御下にある遺伝子群の機能が重要であることが示された.また,Nrf2単独欠損マウス,APC^<Min>マウス,Nrf2欠損::APC^<Min>複合変異マウスとコントロールとして,野生型マウスを20週まで飼育し,その後解剖して,小腸,盲腸,大腸それぞれに生じているポリープの数を調べ,それぞれの組織切片を作製して,細胞レベルでの形態観察を行った.野生型マウス,Nrf2欠損マウスでは,腫瘍の自然発生は認められなかった.Nrf2欠損::APC^<Min>複合変異マウスにおける腫瘍の発生は,APC^<Min>マウスのそれに比較して,個数が大きく,数も多い傾向が得られている.また,特徴的なこととして,大腸における腫瘍の数が多い傾向が得られている.現在個体数を増やして,これらの傾向を確認中である.
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