研究課題/領域番号 |
15023221
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
鎌田 徹 信州大学, 医学部, 教授 (40056304)
|
研究分担者 |
安達 善文 信州大学, 医学部, 助教授 (50201893)
谷口 俊一郎 信州大学, 大学院・医学研究科, 教授 (60117166)
|
キーワード | 発癌遺伝子 / Ras / Nox1 / 活性酸素 / MAPキナーゼ / GATA転写因子 / 腫瘍 / 浸潤 |
研究概要 |
本研究の目的は、Ras発癌遺伝子による癌化をモデルとして、ヒト多段階発癌における活性酸素の機能的役割を解明し、将来の癌治療の方法的基礎を築くことである。我々は、既にRas発癌を媒介する新しい因子として、Ras-Raf-MAPK経路によって誘導される活性酸素産生遺伝子Nox1の産生するsuperoxideが必要とされることを見出した。このことはNox1を含むNADPH oxidaseファミリーが、癌を含む種々のヒト疾患において潜在的に重要な役割を果たすことを強く示唆する。 本研究では、1)Nox1がヒト癌細胞の癌化フェタイプに必要とされるかを検討する、2)Nox1の下流標的蛋白の同定と癌化におけるその役割を解明する、3)Nox1遺伝子発現を調節する転写因子の同定を行うことを主眼とした。 その結果、ヒト膵癌細胞においても、Rasトランスホーム細胞と同様、Nox1によって産生された活性酸素が癌化フェノタイプ(異常増殖、浸潤)に必要であることが示唆された。このことは、ある種のヒト癌細胞におけるNox1及び他のNoxファミリーが重要な癌関連遺伝子としてかかわることを示しており、今後この方面に向けて研究を発展させたい。また、活性酸素によって酸化される標的蛋白の同定はNox1のシグナリング経路を解明する上で、重要課題であり、本研究でその糸口をとらえる可能性が出てきた。 最後にNox1遺伝子発現調節機構に、GATA領域に結合する転写因子が関与することを明らかにしたことは、Nox1蛋白の細胞内プールを律速する機構を理解する上で重要な意味を持つ。今後、MAPKがある種の核蛋白質を介するのかあるいは直接転写因子をリン酸化するのかその調節様式を追究していきたい。
|