研究概要 |
大腸がん予防因子検出のためのbeta-catenin accumulated crypt(BCAC)発現を指標とした新規短期試験の有用性を検討するため,食用ゴマ中の抗酸化物質セサミノール配糖体,緑茶に含まれる新規抽出物ミリシトリン,樹皮に含まれるポリフェノールであるバチカノールCを被験物質としてBCAC発現への修飾効果を検索した。その結果,いずれの物質の混餌投与群においても化学発癌物質誘発BCAC及びaberrant crypt foci(ACF)の発現が基礎食投与群に比して優位に低下した。したがってセサミノール,ミリシトリン,バチカノールCは有望な大腸発がん予防物質である可能性が示唆された(いずれも投稿準備中)。今回検討したBCACモデルは,従来のACFと併用することで化学予防物質のスクリーニング法としてより詳細かつ正確な予知情報を提供するものと期待される。また大腸がん予防物質の可能性があるAuraptene(AUR)を大腸がん細胞(Caco-2,DLD-1,SW480,HCT116)に添加し,添加後2日目に起こる細胞動態の変化を検索した。その結果,すべての細胞においてAUR添加によって細胞増殖は低下し,同時に細胞周期はいずれの細胞においてもS-G2/M期へ集積していた。しかしながらアポトーシスに関しては,HCT116では添加濃度75μMまでにてアポトーシスが誘導されたが,それ以外の細胞ではアポトーシスは誘導されなかった(投稿準備中,2004年米国癌学会示説発表予定)。以上からAURの大腸がんに対するアポトーシス誘導性は細胞依存性が存在することが示唆された。このことは,アポトーシス誘導性を指標とした化学予防物質のスクリーニングを考えた場合,スクリーニング系としては未知部分が多いためprematureであることを示唆する。その一方で,細胞増殖能への影響というパラメーターが化学予防物質スクリーニングにより有用であることが示唆された。
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