大腸がんの発症には、欧米型食習慣との関係が深いとされ、動物性脂肪の摂取に伴い腸管内に増加する二次胆汁酸や多価不飽和脂肪酸の発がんへの関与が強く疑われている。二次胆汁酸及び多価不飽和脂肪酸または関連化合物に応答する核内レセプターの大腸がん細胞における発現及び機能を解析した。 複数の大腸がん細胞株における遺伝子発現を解析したところ、薬剤や胆汁酸に反応するPXR、胆汁酸に反応するFXRの発現が低下しており、ビタミンD及び二次胆汁酸の受容体VDRの発現も低下しているものが多かった。VDRは大腸がんの抑制因子として報告されている。オキシステロール受容体LXRα及びこれらの核内レセプターとヘテロ二量体を形成するRXRαの発現は、いずれの細胞でも認められた。核内レセプターとがん関連遺伝子との遺伝子発現パターンでの相関性は認めなかったが、ある種の核内レセプターの発現低下ががん化と関連することを示唆している。 VDRの発現が保たれているSW480細胞において、アゴニストである活性型ビタミンD3及び胆汁酸リトコール酸の誘導体の遺伝子発現に対する効果を比較したところ、誘導されるVDR標的遺伝子にパターンに相違が認められた。オキシステロール受容体LXRα及び単量体型核内レセプターLRH-1にβ-Cateninの転写誘導特性を抑制する効果を認めた。また、がん抑制遺伝子産物p53にVDR、FXR及びLXRαなどとヘテロ二量体を形成するRXRαの転写活性を抑制する効果を見出した。変異型p53にはこの効果は認められなかった。これらの結果は、脂質代謝制御機構とがん化機構との機能的関連性を示唆している。核内レセプター及びがん関連遺伝子を強発現させた細胞株を作成し、機能的関連性の詳細を検討する予定である。
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