Runxファミリーの発がんにおける役割をマウス個体内で検討する目的に、Runx遺伝子の組織特異的不活性化マウスの作製を行っている。本年度は既に作製したRunx1コンヂィショナルノックアウトマウスを血液幹細胞でCreを発現するFes-Creマウスと交配した。その結果、末梢血球系細胞では一部の細胞でのみRunx1の不活性化が見られ、全ての幹細胞でRunx1の不活性化が起きていない事が考えられた。また、数カ月の観察では、著名ながん化は見られず、長期観察が必要と考えられた。次に、その変異が固形がん、特に胃がんの発生に関与すると考えられているRunx3遺伝子に関して、Runx3を組織特異的に不活性化する事の出来るRunx3コンヂィショナルノックアウトマウスを作製した。Runx3の場合、ES細胞に変異を導入した際に使用したneo遺伝子を除去したESクローンからは生殖系列を介し変異が伝わらなかったので、生殖系列でCreを発現するトランスジェニックマウスを用いneo遺伝子カセットマウス交配により除去する方法で、Runx3コンヂィショナルノックアウトマウスを作製した。次に、Runxファミリーの共通のβユニットであるCbfβをコードするCbfb遺伝子に関してもコンヂィショナルノックアウトマウスの作製を行った。現在、ES細胞のクローニングは終了し、ES細胞のインジェクションを行っている所である。また、Cbfβ遺伝子に関しては、2つのメジャーなアイソフォームを特異的に欠損するマウスも作製した。 今後、これら遺伝子変異マウスを順次組織特異的なCreトランスジェニックマウスと交配することで組織特異的Runx不活性化マウスを作製し、その表現型解析を行うことでRunx不活性化の発がんにおける機能を解析する。
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