研究課題
細胞分裂期(M期)における染色体凝縮は、親細胞から娘細胞への遺伝情報の正確な伝達に非常に重要な過程である。この機構の破綻は遺伝情報の不正確な伝達、その結果としての突然変異や発ガンに直結する。本研究では、染色体凝縮の分子メカニズムを理解するために、ツメガエル卵抽出液を用いた染色体高次構造のin vitro再構築系を用いて、染色体凝縮に中心的な役割を果たしているコンデンシンの染色体への結合と、リン酸化、及び染色体凝縮の関係を解析した。ツメガエルM期卵抽出液からcdc2キナーゼを免疫除去し精子核DNAを加えると、aurora-Bキナーゼの活性が低下し、精子核DNA上のヒストンH3の10番目のセリン残基(Ser10)のリン酸化及びコンデンシンの結合が消失した。また、精子核クロマチンの凝縮も観察されなくなった。aurora-Bキナーゼを免疫除去した場合には、Ser10リン酸化は消失したが、コンデンシンの染色体への結合は約50%は保たれ染色体の凝縮は観察された。一方cdc2キナーゼ活性を抑制した条件で、オカダ酸処理をするとSer10はリン酸化されコンデンシンの結合が若干上昇した。また、この条件下でaurora-Bを免疫除去すると、Ser10のリン酸化は消失しコンデンシン結合の上昇も抑制された。以上の結果から、Ser10のリン酸化はaurora-Bに依存するが、コンデンシンのクロマチンヘの結合及び染色体凝縮は主にcdc2キナーゼにより制御されていることが示された。しかしながら、クロマチンへのコンデンシン結合は、aurora-Bキナーゼにより部分的にではあるが促進されるので、今後はコンデンシン結合とaurora-Bキナーゼの関係、またSer10リン酸化の関係を詳細に解析したい。
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