研究概要 |
内外の様々なストレス刺激はDNAを直接、間接に傷害し、それに対し生体細胞は防御システムを持っている。こうした防御システムの破綻が細胞の悪性変化を引き起こすと考えることができる。私達はストレス刺激で活性化されるが機能のわかっていないGAD34とこれと結合するzfp148に興味をもち、その機能解析を遺伝子欠損マウスでおこなってきた。昨年度、zfp148のヘテロノックアウトマウスが始原生殖細胞の発生異常から精子形成不全をきたすことを報告した。本年度はさらなるキメラ解析、テトラプロイド解析で、Zfp148のヘテロノックアウトマウスが神経管閉鎖不全になることを見い出した。E8.5で神経堤が外側に開き、E9.5で前頭葉から後頭葉にかけ神経管が開いたままになることを見い出した。これはcortical領域の増殖過多によるものであった。腫瘍性に増殖するPC12細胞はNGFを添加すると分化し、増殖が停止する。この系でzfp148、p53、Ser15リン酸化p53発現を検索すると、刺激後6時間ですべてやや低下し、24時間で強く増加する。このことはzfp148がp53と共同して働き細胞増殖停止作用をもつことを示唆する。昨年はGADD34がERストレスによる蛋白合成シャットオフからの回避に働くことを報告した。本年はGADD34がDNA障害性ストレスで活性化される時、細胞の増殖にいかに働くかを解析した。その結果,GADD34はアルキル化剤投与で発現が上昇するも、ERストレスでおこるようなeIF2αのリン酸化は変化せず、p53のセリン15番目のリン酸化を引き起こし、p21/WAF1発現を上昇させることを見い出した。よって、GADD34発現により細胞は増殖停止の方に傾く。
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