[研究目的] CDK阻害タンパク質p27^<Kipl>(以下、p27と略)、真核生物の細胞周期抑制機構におけるキーファクターの1つとして重要視されてきた。p27の量あるいは機能の低下は、細胞周期進行の促進による細胞の異常な増殖を引き起こし、ひいては悪性癌形質獲得の要因となると考えられていた。したがってこのタンパク質の機能制御機構を明らかにすることは、癌細胞の悪性化形質形成の一因を知るために非常に重要である。我々はこの点に焦点をあて、p27の安定性制御に関わると予想される。2種の新規p27結合因子p27NBP1-2をクローニングした。本研究では、これら新規因子の細胞内機能の解析を通して、細胞の悪性化のメカニズムを解明することを目的とした。 [方法と結果] p27NBP1はE3ユビキチンリガーゼであり、p27を基質とし、プロテアソーム依存的に不安定化することがin vivo assayで示された。酵母two-hybrid法によって、p27NBP1と結合する蛋白質p27ALIP、p27ARN等が同定された。p27NBP1はp27ALIPをユビキチン化して不安定化に導いたが、p27ARNの安定性に対しては影響を与えなかった。細胞の免疫染色法により、p27NBP1は単独では細胞内全体に、p27と共発現させると主に核に局在することが分かった。また、フローサイトメトリーで解析した結果、p27NBP1の発現は、S期で高い傾向を示した。以上の結果から、p27NBP1はS期におけるp27の分解制御に関わる新規のユビキチンリガーゼである可能性が示唆された。 p27NBP2はE1A結合タンパク質であることが分かっており、E1Aはp27とp27NBP2との結合を阻害した。現在p27NBP2安定発現細胞株およびノックダウン細胞株を準備中であり、p27NBP2が細胞内在性p27の安定性、細胞周期、細胞増殖速度等に与える影響を調べる予定である。
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