ハイドロダイナミクス法の原理を利用したサイトカイン遺伝子導入によるがん遺伝子治療において、投与する遺伝子医薬品の最適化を目的に種々の検討を行った。まず、ハイドロダイナミクス法による遺伝子デリバリーメカニズムの解明を試みた。過剰量の非発現プラスミドDNAあるいは種々のポリアニオン共存下での静脈内投与時にも遺伝子発現量への影響が見られなかった。細胞膜非透過性の核染色蛍光物質がハイドロダイナミクス投与時に効率的に肝細胞内に取り込まれること、あらかじめ細胞質に発現させたGFPがハイドロダイナミクス法の適用により顕著に肝臓から消失することが明らかとなり、細胞膜の一時的な透過性亢進が示唆された。さらに、本法による遺伝子デリバリーが細胞膜の透過性亢進が見られる投与後初期の短時間(5〜15分程度)に起こる現象であることが示唆された。以上の結果より、ハイドロダイナミクス法による効率的なプラスミドDNAのデリバリーが、細胞膜の一時的な透過性亢進を伴う非特異的な細胞質への直接導入であることが示された。また、ポリスチレンマイクロスフィアーを用いた検討から本法に適用可能な粒子サイズに関する情報も得られた。これらの知見は、今後ハイドロダイナミクス法の原理を利用したがんの遺伝子治療において最適な遺伝子医薬品を開発する上での有用な情報を提供するものと考えられる。
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