研究概要 |
慢性骨髄性白血病(CML)およびフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)治療薬として注目されているチロシンキナーゼ阻害剤グリベックはABLチロシンキナーゼのATP結合部位にATPと拮抗的に結合し,その活性を阻害する。CMLに対するSTI571の臨床成績が蓄積されるにつれ、治療開始後6ヶ月以内にcomplete cytogenetic responseが得られる症例では生存期間が延長するが、そうでない症例ではST1571に対して耐性を生じ易いことなどが知られいかにしてPh+クローンをはやく減少させるかが予後と関連することが明らかとなって来た。 われわれは、本来骨粗鬆症治療薬であるビスフォスフォネート製剤(BP)のなかで第3世代と呼ばれるR_1側鎖に窒素原子を含む環状構造を有する分子、ゾレドロネート(ZOL)が、RAS関連蛋白のプレニル化を抑制することで同蛋白の活性化を阻害し、単剤で白血病細胞にアポトーシスを誘導する効果があることを明らかにした。この抗腫瘍作用はp53非依存性で、多剤耐性の原因となるP糖蛋白の発現に左右されない。加えて、グリベックの抗腫瘍効果をZOLが相乗的に増強させることをin vitroおよびin vivoで明らかにした。さらに、グリベックに耐性となったCML患者新鮮白血病細胞の増殖を抑制し、耐性克服の有力な治療戦略を開発した。この相乗効果は、両分子の細胞周期上における作用点が異なるために生じると考えられた。ZOLは通常の投与量で骨髄に集積してきわめて高い濃度を維持し、白血病細胞の増殖を著明に抑制することを示した。現在、上記の研究成果を臨床応用すべく(トランスレーショナル・リサーチ)、臨床試験研究を計画している。
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