NK細胞およびNKT細胞は抗腫瘍免疫において重要であると考えられているが、その機能には不明な点が多く、今回その解析を行った。 1.NKT細胞はTh1を優位に導き抗原特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導するとする報告と、逆にその誘導を抑制するとする報告がある。今回、DNAワクチンによりCTLを誘導する系にNKT細胞の特異的リガンドであるα-Galactosylceramide (α-GalCer)を併用投与し、その効果を解析した。その結果、α-GalCerによるNKT細胞の活性化はCTLの誘導を抑制することが示された。また、抗腫瘍効果の知られているIL-18の投与によるIgEの産生誘導に、NKT細胞が重要であることも示された。これらの結果、NKT細胞の活性化は、生体の免疫機能の状態および抗原の種類により、Th2反応を誘導しTh1依存的なCTLの誘導を抑制して、腫瘍免疫に負に働く可能性があることが示唆された。 2.MHC Class I分子はNK細胞の活性を抑制することが知られている。今回、ヒトのHLA-Gに相当するマウスblastocyst MHCを遺伝子導入した腫瘍を用いて、この発現がNK細胞の細胞傷害活性を抑制し、腫瘍増殖を助長することを見いだした。 3.これまでにNK細胞の抗腫瘍エフェクター分子としてTNF-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL)が重要であることを報告してきた。今回、このTRAILのdeathレセプター(DR5)に対する抗体を樹立し、その抗腫瘍効果を解析した。その結果、この抗体はFcレセプターを有するマクロファージやNK細胞などのinnate immunity依存的に抗腫瘍作用を発揮し、さらに速やかにCTLを誘導して、TRAIL抵抗性の腫瘍に対しても抗腫瘍効果を発揮することを見いだした。
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