研究概要 |
B.cinereaの分生胞子をプラスチックシャーレ上で1/2PDB培地を用いて静置培養することにより、植物体表面と同様に付着器を形成することが明らかとなった。そこで、胞子懸濁液をシャーレ上で12時間静置培養し、付着器を形成した菌体から粗タンパク質を抽出した。対照として、胞子懸濁液を振とう培養して得られた菌体からも同様に粗タンパク質を抽出した。両タンパク質を二次元電気泳動に供試したところ、両者の検出タンパク質スポットに差異が見られた。これらについて画像解析ソフトimagemaster 2D-Eliteを用いて解析した結果、静置培養サンプルからは146スポット、振とう培養サンプルからは173スポットが検出された。両者のマッチング解析によって、付着器形成時に特異的に見られる62個のスポットを検出した。これらのうち発現が顕著であったものをMALDI-TOF MASS分析した結果、一つはDNAの複製に関与するSaccharomyces cerevisiaeのヒストンアセチルトランスフェラーゼ(Hat1)と相同性がみられた。 B.cinereaのGタンパク質αサブユニット(Gα)は、BCG1,BCG2(Gronover et al.,2001)、BCG3(長田ら,2003)の3つが存在する。これらのGαと直接相互作用すると考えられるβサブユニット(Gβ)をコードする遺伝子を縮重PCRによって単離した。このGβ遺伝子は、1074bpからなり、4つのイントロンで分断されていることが確認された。推定されるアミノ酸の数は358であり、その配列はFusarium oxysporum、Cryphonectria parasitica、Magnaporthe griseaのGβと約90%の高い相同性を示した。また、WD-repeatが7つ存在するなど、Gβの特徴的な構造が確認されたので、この遺伝子をbcgb1と命名した。定量RT-PCRにより、これらのGα及びGβ遺伝子の宿主感染時における発現量を解析した結果、bcg3遺伝子はbcg1やbcg2と異なる感染時に特異的に発現することが明らかにされた。また、bcgb1遺伝子はbcg1遺伝子と感染時を通して同レベルで発現することが明らかにされた。
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