植物のストレスホルモンであるエチレンは病原菌感染などで誘導される。エチレンシグナル伝達系を構成する因子はアラビドピシスを用いた遺伝学的解析により既に幾つか同定されて、エチレン受容体からMAPKKKとみられるCTR1と機能未知の膜タンパク質EIN2を経て転写因子EIN3へとシグナルは伝達されることが示唆されてきた。また、EIN3は直接的に、あるいは、下流の転写因子ERFの発現を活性化し、植物防御遺伝子の発現に関与していることが示されている。本研究課題で、エチレンシグナル伝達の本質は、転写因子EIN3の分解制御であることを明らかにしている。即ち、エチレンはEIN3の分解を抑制し、一方でエチレンと拮抗的に作用するグルコースはEIN3の分解を加速することを示した。そこで、本年度は、恒常的な活性型に改変されたCTR1を用いて、CTR1の機能はEIN3の分解促進であることを確認した。一方で、グルコースシグナルを伝達するヘキソキナーゼについても検討し、触媒活性を持たない変異型のヘキソキナーゼの発現させた場合でも、EIN3分解が促進されることを確認した。また、FALGタグを融合させたEIN3を発現している形質転換体を用いて解析に加え、抗EIN3抗体を作成し解析を行った。抗EIN3抗体と野生株、EIN3形質転換体、ein3変異株を用いて、エチレンの有無によるEIN3タンパク質のレベルの変化を調べ、エチレン応答の強度とEIN3レベルが一致することを確認した。また、ユビキチナーゼ複合体のサブユニットをコードする遺伝子に変異を持つ変異株では、エチレンの有無にかかわらずEIN3が蓄積していることを確認した。これらのことより、エチレンシグナル伝達系とグルコースシグナル伝達系のクロストークの仕組みのモデルを提唱した。
|