幼若大脳皮質神経細胞は細胞外脂質メディエーターであるリゾフォスファチジン酸/LPAに応答して伸展しつつある神経突起を一過性に退縮させる。本研究では、LPAの神経突起形成時の微小管に対する効果およびアクチンと微小管の相互作用への影響について検討した。得られた結果は以下の通りである。 1.微小管を構成する各種チューブリン(αチューブリン、βチューブリン、チロシン化チューブリン、アセチル化チューブリンおよびポリグルタミン酸化チューブリン)に関する免疫細胞化学染色、ウエスタンブロッティングを行った。LPAにより突起退縮が誘発された時、いずれのチューブリンも脱重合することなく神経突起内から細胞体の方向へ輸送された。 2.この輸送はアクチン重合阻害剤であるサイトカラシンDにより阻害されたが、微小管安定化剤であるタクソールによっては影響を受けなかった。 3.ポリグルタミン酸化チューブリンはアクチンフィラメントと共存していた。 これらのことからLPAによる微小管の再編成は微小管の細胞体への輸送が原因であり、この輸送はアクチン重合反応に依存していることが明らかとなった。またポリグルタミン酸化チューブリンは他のチューブリンとは異なる役割を果たしていることが考えられた。 アクチンと微小管の相互作用が考えられたため、両細胞骨格成分の架橋分子であるMAP2c、MACFおよび微小管輸送に関わるdyneinに着目し、それらの細胞内分布を免疫組織学的に調べた。 1.MAP2cおよびdyneinの細胞内極在は微小管と一致していなかった。 2.株化神経上皮(TR)細胞にMACFの微小管結合部位を過剰発現させたところ、微小管の安定化とともにLPAによる微小管再編成の阻害が観察された。 これらからLPAによるアクチンに依存した微小管輸送にMACFが関与していることが示唆された。
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