研究課題
小脳の機能区分は小脳皮質と小脳核の入出力神経回路によって決まるはずである。しかし、小脳全体での機能区分がどのような規則性に基づいて構築されているかは、これまでよく分かっていなかった。この構築原理を解明するため、小脳皮質におけるアルドラーゼC発現の縦縞状のパタンと下オリーブ小脳投射に注目した。特異性と親和性が高い優れた抗アルドラーゼC抗体を独自に作成した。ラットの小脳の連続切片において、この抗体を用いてアルドラーゼCを標識し、その陽性・陰性の領域の縞状の構築パタンを小脳全体で詳細に解析し、平面的地図として表した。更に、ラットの下オリーブ小脳投射軸索を、ビオチン化デキストランの下オリーブ核の各所への微量注入によって標識し、その投射領域を二重染色によって標識されたアルドラーゼC陽性・陰性領域の上に同定した。この解析により、類似性のあるアルドラーゼC陽性または陰性の領域に対する登上線維投射の起始部が、下オリーブ核の中にまとまって存在することが分かった。それらの場所は、脳の異なる部位からの投射を受ける場所であった。その結果、小脳皮質および下オリーブ核の機能区分は、アルドラーゼC発現の縞構造と、投射のトポグラフィーに密接に関係し、全体として大きく5グループに区分されることをつきとめた。グループ1、2、5は、それぞれ大脳・中脳、上丘・前庭核、副視覚系と関係し、アルドラーゼC陽性の縞上に存在する。グループ3、4は、体性感覚に関係し、アルドラーゼC陰性の縞上に存在する。これは、今までの小脳の機能区分についての理解を革新的に変更する結果であり、J.Neurosci. Vol.24に発表された。
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J.Comp.Neurol. (印刷中)