研究概要 |
樹状突起の主要細胞骨格を成す微小管の配置は、様々な分子の調節を受ける。形態調節の役割を担う分子の候補としてLow molecular weight MAP2 splicing variants(SV)を想定し、新規SVの探索とその働きを調べた。ヒト胎児脳(21〜30週齢)cDNA試料からのPCRと5'-RACE、およびラットE16、E17胚の脳から得られたmRNAのRT-PCRによって新規MAP2-SVを探索し、新しいスプライシングバリアントを更に複数クローニングした。この中には新規エクソン5Aを持つMAP2-SVが見つかり、転写開始領域が複数あることが示された。またいくつかのエクソンを欠き、二つのtypeII cAMP dependent protein kinase binding siteの内一方を欠くMAP2-SVも発見した(MAP2e)。さらに、このような働きの未知のMAP2-SVの、樹状突起形態形成への寄与を調べる目的で、MAP2c, MAP2eをGFPと伴に強制発現するプラスミドを作成した。同プラスミドを、コルヒチン処理した株細胞に強制発現させたところ、MAP2eの場合には、MAP2cの場合に見られたフィロポードよりも有意に短いフィロポードが観察された。このことからも新規のMAP2-SV、MAP2eは、細胞の中で微小管と結合し、何らかの細胞形態への影響を与えていると考えられた。 さらに非常に興味あることに、低分子量のMAP2(MAP2c/d)は、神経細胞に発生運命が定まっているが、まだ分裂を続けている神経前駆細胞にも発現していることが明らかとなってきた。それゆえ、これまでMAP2は神経細胞の標識分子と考えられてきたが、これを改めて、神経細胞と神経前駆細胞の標識分子であると理解を訂正する必要性がある。
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