1.NMPA受容体のNR2Bサブユニットと相互作用する新たなRhoGAPであるP250GAPを同定し、その機能解析を行った。P25QGAPのmRNAは脳に豊富に存在し、特に大脳皮質、海馬や視床に多かった。P250GAPはシナプス後肥厚部に濃縮し、NR2BサブユニットやPSD-95蛋白と共局在を示した。また、P250GAPはRhoファミリー蛋白の活性を抑制し、神経突起伸展に変化をもたらした。さらに、NMDA受容体活性化により、P250GAPは脱リン酸化され、その分布が変化した。したがって、P250GAPはNMDA受容体依存性のスパイン形態の調節に関与することが示唆された。 2.NMDA受容体のNR2Bサブユニットの最も強くリン酸化されるチロシン残基であるTyr1472をフェニルアラニンに置換したNR2Bサブユニットを発現するノックインマウスを作製し、その機能解析を行った。このノックインマウスでは、何も処理しない状態で海馬および扁桃体でのNR2Bのチロシンリン酸化の程度は4分の1以下の減少していた。したがって、Tyr1472をひとつ置換するだけで、脳内でのNR2Bチロシンリン酸化が激減することが明らかとなった。このノックインマウスでは、扁桃体の外側核でのシナプス伝達の長期増強が障害され、音刺激による恐怖条件付けに異常が観察され、NR2BサブユニットのTyr1472のリン酸化がシナプス可塑性と恐怖学習に重要な役割を果たすことが明らかとなった。 3.カンナビノイドによる海馬抑制性シナプス伝達の逆行性抑制の増強に、シナプス後細胞の1型および3型ムスカリン性アセチルコリン受容体が関与することを、それぞれの受容体を欠損するノックアウトマウスから得られた培養系を用いて明らかにした。
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