本研究では、大きく分けて二つのアプローチを用いた。 (1)ネスチンのプロモーター/エンハンサーの構築を用いてIL-2R/GFPをトランスジェニックマウスに発現させ、シュードモナス外毒素の一部を融合したimmunotoxinの脳内局所投与と組み合わせることにより神経幹細胞を時空間特異的に除去させる事が出来る実験動物を開発し、海馬による空間学習のモデルにより神経幹細胞選択的除去の記憶・学習に対する影響を観察する。これまでに作成したトランスジェニックマウス数ラインを解析したところrostral migratory streamに弱いGFPの免疫原性を認めたが、GFPそのものの蛍光では信号が認められなかったため、より効率の高い遺伝子導入が期待されるlentivirus vectorを用いてtransgeneを導入するため、その構築を行っている。 (2)ストレス応答を制御するグルココルチコイドレセプター(GR)のプロモーターの下流にGFPまたはRFPを発現するトランスジェニックマウスを作成し、(1)の動物あるいはネスチンのプロモーター/エンハンサーの下流でGFPまたはそのcolor variantを発現するトランスジェニックマウスとのダブルトランスジェニックを作成する。その上でストレス負荷、副腎摘出等によりこれらの分子を発現する神経細胞の神経回路形成ヘの関与、脳内での動態の変化を解析する。まずGRのプロモーターの下流にGFPを繋いだトランスジェニックマウスを作成し、固定した成熟脳でのGFPの発現を解析したところ海馬領域においてGFP陽性細胞とGR免疫陽性細胞とがほぼ100%一致しており、海馬における解析に使用できることが確認された。また、生後5日の海馬の初代培養神経細胞においてもGFP陽性細胞を認めた。このマウスにおいては、GFPが細胞体のみならず神経突起にも拡散して分布するため、核内レセプターであるGR陽性細胞の形態をGFPの蛍光を指標に観察することができた。
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