大脳皮質は多様なニューロンからできているが、これらの間にどのようなシナプス結合選択性があるかはよくわかっていない。先ず、皮質GABA作働性非錐体細胞の軸索、樹状突起上でシナプスがどのように作られていくのかをみるために、シナプスブトン、スパイン形成の確率分布をサブタイプごとに調べた。シナプスブトン・スパインの間隔分布どれも指数関数で近似できるが、サブタイプごとにそれらの平均値は異なっていた。シナプスブトン・スパイン間隔が指数分布していることから、シナプスが突起上にランダムに配置されていると考えられる。実際、軸索上のシナプスブトン密度は細胞体からの距離に依存していなかった。突起の屈曲とシナプス形成の関係をみるために、軸索・樹状突起分枝ごとの曲がりくねりと分枝上のブトン・スパイン密度を計測した。ブトン・スパイン分枝密度の平均値はサブタイプごとに異なるが、ほぼ同じ変動係数(CV)のガウス分布に従い、分枝長とは相関していなかった。非錐体細胞はサブタイプごとに異なる頻度でシナプスを作るが、どのタイプでも突起上に一様に、局所的にはランダムにシナプス配置していることがわかった。非錐体細胞の中には、その出力先の部位が非常に選択的なものから、FSバスケット細胞のように細胞体から樹状突起のシャフト・スパインまで多様な後シナプス構造につくものまである。そこで、上記のようなシナプス配置の神経回路におけるシナプス結合の特異性をみるために、FSバスケット細胞軸索の、単一錐体細胞の樹状突起でのコンタクト部位の分布を調べた。また、FSバスケット細胞の軸索が結合のある錐体細胞の樹状突起に接近する点を求め、実際のコンタクトとの割合を調べた。その結果、FSバスケット細胞による錐体細胞表面における支配領域の組み合わせはペアーごとに多様であるが、各後シナプス細胞にとって選択的であると考えられた。
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