我々はインフルエンザウイルスゲノムRNA-タンパク質複合体(RNP)のRNA合成促進に関わる宿主細胞因子として、RNA synthesis/polymerase Activating Factor(RAF)-1とRAF-2を同定した。これらは、ウイルスRNAとウイルスRNA合成に関わる塩基性タンパク質の解離と集合にかかわる分子で、分子内に酸性領域を含み、その領域に依存して機能するシャペロン様分子(酸性分子シャペロン)であった。本研究では、ウイルスのRNA-タンパク質複合体の構造変換機構の一翼を担う酸性分子シャペロン群について、分子レベルおよび細胞レベルでの動的な構造についての解析を含んだ機能発現機構と機能調節機構を明らかにすることを目的とした。 インフルエンザウイルスRNPを構成するヌクレオキャプシドタンパク質をRNAに運ぶシャペロン様因子であるRAF-2は、2つのサブユニット(48kDaと36kDa)から成っている。質量分析と組換え体を用いた確認実験から、両者はともにスプライシング関連因子であることが判明した。RAF-248kDaサブユニットはウイルスゲノムRNA(vRNA)と結合していないウイルスヌクレオキャプシドタンパク質(NP)と相互作用し、NPをvRNAにリクルートすることで鋳型活性の高いvRNA-NP複合体の形成を促進していると考えられる。RAF-1/Hsp90は、ウイルスRNAポリメラーゼ(PB1、PB2、PAの3者複合体)のアセンブリーに関与することが示された。すなわち、RAF-1/Hsp90はポリメラーゼ3者複合体を形成する前のサブユニットおよびサブコンプレックスと結合し、名サブユニットをアッセンブリーさせる調節因子である可能性が考えられた。
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