研究概要 |
我々は翻訳終結因子であるeRF3/GSPTが、eRF1と相互作用し翻訳終結過程を制御する一方で、ポリA鎖結合蛋白質(PABP)とも相互作用し翻訳終結と共役してmRNA分解過程を制御していることを示してきた。本研究の目的は、この翻訳終結と共役したmRNA分解の分子機構の詳細を明らかにすることにある。平成16年度においては、特にeRF3/GSPTのGTP結合蛋白質(G蛋白質)としての性質に着目し、共役過程においてこのG蛋白質としての特性がどのように使われているかを検討し、以下の知見を得た。(1)eRF3/GSPTはGTP結合型においてeRF1と結合し、このようなGTPの効果は、他のヌクレオチド(ATP, UTP, CTP, ITP)では観察されない。また、GDP結合型においてeRF3/GSPTは、eRF1から解離する。eRF3/GSPTのGTP結合部位に変異を導入するとeRF1との結合が阻害されることからもこのGTP依存性の重要性が裏付けられた。また、このような変異をもつ細胞株を作製し翻訳終結過程を調べると異常が観察されることから、eRF3/GSPTへのGTPの結合が翻訳終結において必須の役割を果たしていることを証明することができた。(2)一方、eRF3/GSPTとPABPとの結合に関しては、GTP結合型、GDP結合型に関わらず観察され、eRF3/GSPTのGTP結合部位の変異による影響も観察されなかった。しかしながら、このような変異をもつ細胞株において、mRNA分解過程には異常が観察され、mRNA分解過程がGTP依存的な翻訳終結過程と共役しているということを強く示唆した。(3)さらに、eRF3/GSPTの機能欠損株においてeRF1を過剰発現すると翻訳終結は正常なレベルに回復するが、このような株においてmRNA分解の異常は回復しないことから、mRNA分解を引き起こすには翻訳終結にみでは不十分でありeRF3/GSPTが必須の役割を果たしているいることを証明した。以上のように、eRF3/GSPTはG蛋白質としての特性を使い、翻訳終結とmRNA分解とを共役させる分子スイッチとして機能していることを明らかにした。
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