シロイヌナズナを舞台に、RNAが関与した遺伝子発現制御の分子機構を解析した。取り上げたのはマイクロRNAの合成経路と、mRNAのナンセンス介在分解系(NMD)である。マイクロRNAは、いったん数百塩基長からなる前駆体RNAが合成された後に、2段階あるいは3段階の特異的な分解反応をうけ、最終的に18-24塩基長の短いRNAが完成する。その短いRNAは、特定のmRNAの翻訳を阻害するか、mRNAを分解することによって機能する。この特異的な分解に関与するのは、RNaseIIIのモチーフをもつ、Dicer-likeタンパク質1(DCL1)であることを、この突然変異体の中でmiR163が合成されないことから結論づけることに成功した。この知見は植物と動物との間で同時ほどの長さのmiRNAを合成するにも、分子機構の上で異なることを初めて明らかとした。植物にもNMD現象が存在すること、その現象にAtUPF3という遺伝子産物が関与することを明らかとした。植物のNMD機構は、遺伝子から複数のスプライシングバリアントが生まれた後に、機能を果たす形のもののみを残す営みに関与することが示唆された。
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