hnRNP D,FMRP及びアプタマーによる遺伝情報発現制御の分子基盤

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15030214
• 研究機関: 横浜国立大学
• 研究代表者: 片平 正人 横浜国立大学, 大学院・環境情報研究院, 助教授 (70211844)
• キーワード: DNAシャペロン / テロメラーゼ / hnRNP D / Tat / RNAアプタマー / テロメア / Musashi / RNA結合タンパク質

研究概要

hnRNP Dタンパク質とテロメアDNAの複合体の立体構造をNMR法により決定した。この結果hnRNP Dタンパク質がいかにしてテロメアDNAを認識するのかが、原子レベルの分解能で明らかになった。1アミノ酸置換のhnRNP Dタンパク質及び1塩基置換のテロメアDNAを調製し、ゲルシフト実験を行う事により、構造学的解析により得られた両者の特異な相互作用を、生化学的にも検証する事ができた。またhnRNP Dタンパク質には、ミスフォールドした核酸の構造を正しいフォールドに遷移させる、核酸シャペロンとしての働きがある事も明らかにした。
FMRPの標的RNAの立体構造をCDにより解析した。その結果、従来想定されていた典型的な4重鎖構造が常に形成されているわけではない事がわかった。この結果に基づき、FMRPと標的RNAの相互作用様式を考察した。
HIVのTatタンパク質に対するRNAアプタマーとTatタンパク質のRNA結合領域の部分ペプチドとの複合体の構造解析を行った。その結果、Tatタンパク質のアルギニン残基とRNAアプタマーとの間の相互作用様式を同定することができた。これより、Tatに対してより高い親和性を有するRNAアプタマーをデザインする為の指針が得られた。
Musashiタンパク質の2つのRNA結合ドメインに関し、立体構造、運動性及び標的RNAとの相互作用様式を決定した。両ドメインは、アミノ酸配列の類似性は高いが、表面電荷や運動性に関しては大きな差がある事が分かった。これに基づきMusashiタンパク質の機能発現メカニズムを提唱した。

研究成果

• [文献書誌] Matsugami 他: "Structural basis of the highly efficient trap of the HIV Tat protein by an RNA aptamer"Structure. 11. 533-545 (2003)
• [文献書誌] Matsugami 他: "Intramolecular higher-order packing of parallel quadruplexes comprising a G:G:G:G tetrad and a G(:A):G(:A):G(:A):G heptad of GGA triplet repeat DNA"J.Biol.Chem.. 278. 28147-28153 (2003)
• [文献書誌] Miyanoiri 他: "Origin of higher affinity to RNA of the N-terminal RNA-binding domain than that of the C-terminal one of a mouse neural protein, Musashi1, as revealed by comparison of their structures, modes of interaction, surface electrostatic potentials and backbone dynamics"J.Biol.Chem.. 278. 41309-41315 (2003)
• [文献書誌] Uesugi 他: "RNA and DNA which contain two GGAGG segments connected with UUUU or TTTT sequences, form entirely different quadruplex structures"Nucleic Acids Res.Suppl.. No.3. 51-52 (2003)
• [文献書誌] Enokizono 他: "Destruction of quadruplex by proteins, and its biological implications in replication and telomere maintenance"Nucleic Acids Res.Suppl.. No.3. 231-232 (2003)
• [文献書誌] 片平正人: "DNAの異常構造とそれをときほぐすDNAシャペロン"生物物理. Vol.44. 10-15 (2004)
• [文献書誌] 片平正人: "日本分光学会測定法シリーズ「NMR分光法」(分担)"学会出版センター. 269 (2003)