研究概要 |
マウス精子分化の過程で高発現するRNA結合タンパク質mPrrpの生殖細胞における機能解明を目指し、本課題ではmPrrpが結合し制御するmRNAと相互作用するタンパク質の同定を行った。抗mPrrpモノクローナル抗体で精巣抽出物から免疫沈降を行い、得られたmRNAを逆転写しプラスミドベクターにクローン化した。このようにして得られた100クローンのDNA配列を決定したところ、精子の尾部の運動を司るモータータンパク質のmRNAやその運動エネルギーとなるATP産生系のタンパク質をコードするmRNAを得ることができた。このmRNAは抗mPrrp抗体による免疫沈降物に特異的に見られたことと、それらのmRNAとタンパク質の発現時期やmPrrpタンパク質の細胞内局在や機能する時期が一致することから、これらのmRNAはmPrrpによって制御されることが強く示唆された。さらに、mPrrpがこれらmRNAをどのように制御するかを明らかにするためmPrrpと相互作用するタンパク質の同定を行った。抗mPrrp抗体で免疫沈降し、共沈してきたタンパク質を質量分析法で同定したところ、PABP1,MSY2,Upf1,CBP80タンパク質などが共沈してきた。翻訳抑制されたmRNAに結合するY-boxタンパク質MSY2が共沈してきたことはmPrrpが制御するmRNAが翻訳制御されていることを示しており、mPrrpの機能を明らかにするための手がかりを得ることができた。今年度の結果をまとめると、mPrrpは精子の運動性を担うタンパク質をコードするmRNAの翻訳を制御し、精子形成の最終段階で適正に翻訳が行うことに関与しているらしいことが分かった。
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