本計画では、核内の成熟体プールがどのように形成され、どのような生理的意義を持つかを明らかにする目的で、酵母S.cerevisiaeを材料として以下の解析が進行中である。 ◆異種酵母であるS.pombeのtRNAを発現するS.cerevisiae核融合変異株を構築し、接合過程を利用したヘテロカリオンアッセイによって、S.pombe tRNAを発現する核で転写されて細胞質に輸送された成熟体tRNAが、他方の核に再輸送されるかを検討した。共焦点顕微鏡システムによるFISH観察の結果、S.pombe tRNA遺伝子を発現してない核においても、同tRNAが検出され、細胞質から核へ成熟体tRNAが輸送されていることが明かとなった。 ◆tRNA核外輸送因子であるexportin-5の酵母ホモログMsh5pがtRNAの核外輸送に関与するかについて検討した。Δmsn5単独では、成熟体tRNAの核外輸送、前駆体の修飾に何ら影響を与えなかったが、核外輸送因子Los1Pおよび核内でtRNAの核外輸送に関わるUtp8pとの遺伝的相互作用が明かとなり、Msn5pがtRNAの細胞内動態に関わることがわかった。 ◆tRNA核外輸送因子と機能的に拮抗する因子を検索するため、過剰生産時にΔlos1、Δmsn5二重欠失変異株またはΔlos1、utp8二重変異株が致死となる遺伝子を酵母多コピーライブラリーよりスクリーニングしている。現在、複数の候補クローンを得ており、含まれるORFのうちどれが現遺伝子であるかの特定を行っている。 ◆tRNAの細胞質から核への輸送をin vitroで再現するため、semi-intact細胞系を構築している。
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