研究概要 |
抗Wa抗体は強皮症に特異的に検出されるまれな自己抗体として研究者らが報告し,その対応抗原は4-5種類のtRNAと結合する48kDa蛋白であることを明らかにしていた.Wa抗原の実体は長く不明であったが,Wa抗原の遺伝子クローニングにより,NEFAまたはNucleobindin-2 (Nucb-2)として報告された分子と一致することが判明した.NEFA/Nucb-2はその構造上DNA結合蛋白と考えられるが,これまでのところDNAあるいはtRNAを結合したという報告はない.しかし,Wa抗原が一定の種類のtRNAを結合しNEFA/Nucb-2と一致することは,同分子が新たなtRNA結合蛋白であり,tRNAが関与する蛋白翻訳系あるいはtRNAの代謝などで未知の機能を持つRNPマシーンである可能性が高い.本研究では我々が見出した抗Wa抗体の対応抗原(Wa/NEFA/Nucb-2)の機能を追求することを目的とした. 1.Wa抗原に結合するtRNAの同定:すべてのアミノ酸をカバーする既知の22種類のヒトtRNA塩基配列よりプライマーを合成し,RT-PCRによりtRNAの種類を同定するシステムを開発した.抗Wa抗体プロトタイプ血清が免疫沈降したtRNAを鋳型としてRT-PCRを行ったところ,His, Lys, Met, Pro, Valの5種類のアミノ酸に対応するtRNAが同定された. 2.Wa抗原全長cDNAの分離:Wa抗原をコードする全長cDNAを既知のNEFA/Nucb-2の塩基配列からRT-PCR法により合成した.既知の全長cDNAとともに,Exon 11のスキップによると考えられる90bp (30アミノ酸)が欠失した短鎖cDNAが分離された.両者から大腸菌に発現させた蛋白はともに抗Wa抗体陽性血清と反応することが確認された. 3.Wa抗原とtRNAの結合:大腸菌発現Wa抗原とHeLa細胞抽出tRNA同士の直接の結合は確認できなかった.そこでHis-tagを結合したWa-cDNAをHeLa細胞に導入して発現させ,in vivoでのtRNA結合能を検討している.
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