真核生物の核にコードされる遺伝子の多くは、イントロンと呼ばれる介在配列によって分断化されている。このことにより、核内で合成されたmRNA前駆体が細胞質において蛋白質合成の鋳型として機能するためには、イントロンを取り除き、エクソン同士を連結するRNAスプライシングが必須な過程となっている。ヒトではイントロンはmRNA前駆体の実に95%を占めている。スプライシングにより切り出されたイントロンは核内にとどまり、スプライシング因子が除去された後、分解されると考えられている。またイントロン上にはsnoRNAやmicroRNAなどのnon codingRNAがコードされており、イントロンの代謝は高等真核生物において重要だと考えられているが、ほとんど明らかにされていない。 本研究では核内でのイントロンの代謝とそれに伴うスプライシング因子のリサイクル機構を解明するため、イントロンの脱ブランチ反応を司る酵素、hDBR1に注目した。イントロンが分解される過程では、まずこの脱ブランチ反応が起こることが明らかになっている。そこで、イントロンには会合できるが、脱ブランチ活性を持たない変異体を作製することで、イントロン分解過程のRNA-蛋白質複合体が単離できると考え、まずこの酵素のドメイン解析を試みた。最初にこの蛋白質の細胞内局在を調べたところ、核内(核質)に存在することが明らかになった。さらに興味深いことに、核小体周辺部にも強いシグナルが見られた。またこの蛋白質の核移行シグナルはカルボキシル末端の26アミノ酸の領域に存在することが明らかになった。さらにアミノ末端側に存在する、蛋白質脱リン酸化酵素に相同性のある領域に突然変異を導入した変異体を複数作製した。これらの変異体も安定に培養細胞内で発現することが確認されたが、どの変異体も脱ブランチ活性を持たず、この部位が活性に重要であることが明らかになった。
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