研究課題
HIVのウイルス粒子内でRNA一本鎖ゲノムは非共有的に結合した二量体として存在している。これによりウイルスは相同組換えによる遺伝的多様性の獲得や、ゲノム損傷の補償を行っていると言われる。しかしそれらの理由が二量体化という複雑で手間のかかるイベントを、物理的制約を抱えるウイルスが捨てずにいることを十分説明できるとは考えにくい。本研究で研究代表者は、HIV-1ゲノムRNA上のパッケージングシグナル/二量体化シグナル(E/DLS)領域をゲノムRNA上に複数配置することにより、HIV-1正常粒子中に単量体化したゲノムが生成することを見いだした。この現象を応用してウイルス粒子内でのゲノム二量体化をパッケージングと切り離して解析するシステムを構築した。このシステムを用いた解析の結果は、HIV-1のゲノム二量体化が、複数のステップからなるゲノムパッケージングという機構のうちの必須な1ステップであるという可能性を強く示唆するものであった。この仮説は長年の命題であった二量体化の理由に対する簡潔で合理的な説明となり得るものと考えられる。さらに粒子内ゲノム二量体化を引き起こす必要十分領域の同定を行った結果、ゲノムRNA上の約150塩基の領域であることを明らかにした。この領域をウイルスゲノムに挿入したところ、著しい増殖阻害効果が認められ、それは感染初期過程に存在していることも判明した。このことより、ゲノム二量体化もしくは二量体化シグナルそれ自身がゲノムパッケージング以外のウイルス増殖のステップにも重要な役割を果たしていることが示唆された。
すべて 2003
すべて 雑誌論文 (1件)
JOURNAL OF VIROLOGY Vol.77, No.7
ページ: 4060-4069