研究概要 |
細細胞の核内構造が転写を代表する核内反応の制御に関わる例が近年数々報告されている。本研究ではIGCの構成成分とRNA転写およびスプライシング、mRNA輸送に関わる機序と、核膜孔の細胞質フィラメント構成因子であるSUMO E3リガーゼRanBP2に焦点を当て、核膜孔におけるRNAの輸送と翻訳後修飾因子SUMOの役割を明らかにすることを目的として研究を推進し、以下の結果を得た。 1.SUMO結合タンパク質の解析:大腸菌体内でSUMO化タンパク質を大量に合成するシステムを完成させた。酵母2ハイブリッド法によりSUMO化タンパク質結合因子STIPsを複数同定し、大腸菌システムによるリコンビナントSUMO化タンパク質を用いた解析を行った。STIP3はRNA結合タンパク質であり、SUMOがSTIP3との相互作用を介して核内RNAの動態制御に関わるというモデルを提案した。 2.in situ SUMO化反応とRNAiによるSUMO化システムの解析:SUMO化反応と核内構造、および生体分子輸送の解析をセミインタクト細胞において解析する技術を確立した(in situ SUMo化反応系)。こうした新技術と、RNAi法を組み合わせることで、SUMO化システムとIGC、核膜孔の構築メカニズム、そして核膜孔におけるSUMO化およびRanBP2-E3活性生理的な意義を解析した。 3.RanBP2のsiRNAによるノックダウン効果の解析:RanBP2のsiRNAにより,細胞内のRanBP2を約80%ほどノックダウンすることに成功した。RanBP2ノックダウン細胞において、ポリA-RNAの核内における蓄積をポリAのin situ hybridization反応を用いて観察したのと同時に、IGC核スペックルの構成因子の局在異常を免疫染色法により検出した。核膜孔タンパク質や核ラミナの構造には変化が見られなかったことから、この結果は、RanBP2の機能破綻が直接的にRNA輸送及び核構造の制御に関わることを示していると考えられた。
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