研究概要 |
今年度は定常期特異的に発現するリボソーム結合蛋白質YhbHとYfiAが100S形成に如何に寄与するかについて研究した。この両者は40%の相同性をもち、YfiAがC末18アミノ酸長いことを除けば非常に良く似ている。またYfiAは主として70Sに結合するが、YhbHは100Sに特異的に結合することをわれわれはすでに見出している。したがって特にYhbHの100S形成に対する寄与が注目される。われわれはYhbH, YfiAの欠損株と二重欠損株を作成し、各株のリボソームの態様を蔗糖密度勾配遠心法で調べた。二重欠損株はRMFのみが結合しているが、形成された70Sダイマーは90Sであった。これに対YfiA欠損株ではRMFとYhbHとが結合しているが、100Sが形成された。この100S形成は野生株よりも多かった。以上の結果はRMF単独では90Sが形成され、これにさらにYhbHが結合すると100Sに転化することを示唆している。かつてin vitroでリボソームにRMFを添加する実験で、定常期のリボソーム(予めYhbHを含んでいる)を用いると100Sが形成され、対数期のリボソーム(YhbHを持たない)を用いると90Sが形成されることとよく斉合する(Wada, BBRC, 1995)。また対数期が終了した直後の細胞で、短時間90Sが観察されることも、YhbHがRMFよりわずかに遅れて発現してくると仮定すれば説明できる。つまり100S形成は二段階であり、まずRMFによって未成熟の90Sが出来、ついでYhbHが結合すると100Sに成熟することが明らかになった。他方YfiAとRMFを持つYhbH欠損株では70Sダイマーが形成されなかった。これはYfiAが100S形成を阻害することを示している。構造が良く似たYhbHとYfiAが100S形成に対して逆の働きを持つことは極めて興味深い(投稿中)。
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